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みやま市は、福岡県の南部に位置し、市域の多くは筑紫平野(筑後平野)に含まれる平地となっており、市の西部は、有明海に面し自然豊かな農業のまちとして発展
同市は、防災情報を迅速・広範に伝達するため、市内全域をカバーする同報系無線設備および市役所と車両等の間で通信する移動系無線設備として、平成24年6月にMCA無線を導入
同設備は、翌月に発生した九州北部豪雨災害において、多様な災害情報を迅速・確実に伝達して活躍
MCA無線選定の理由
- 施設整備費用が安価
- 防災ラジオによる戸別受信システムやJ-ALERTとの連携が確立
- 災害時の高い信頼性
インタビュー
MCA無線利用による防災通信システムを構築した背景をお聞かせください。
- みやま市では、これまで災害が少なかったこともあり、財政負担の大きい同報系防災行政無線の整備が遅れていました。
- しかし、近年全国的に大規模な災害が多発するなか、住民に対する情報伝達手段の整備は防災対策のなかでも最重要課題となり、平成20年から同報系無線の整備に向けた具体的な検討を開始しました。
- 情報通信の発展に伴い、防災通信システムも多種多様化している状況にあって、市の財政状況を考慮したより費用対効果の高いシステム整備が求められていました。
なぜ、自営通信設備ではなくMCA無線利用を選んだのですか?
- 福岡県が開発を主導したMCA無線を利用した「ふくおかコミュニティ無線」が近隣自治体でも採用されはじめ、従来の同報系防災行政無線に比べ非常に安価に整備ができることが分かりました。
- MCA無線を利用したシステムは、移動無線センターが設置・運用する各中継局を介した通信のため、自営通信設備で必要な基地局・中継局の整備が不要であり、屋外拡声子局の設備にも汎用品を多用することで、安価なシステム整備が可能になります。
- 拡張性でも、防災ラジオによる戸別受信システムやJ-ALERTとの連携も確立されており、また地域振興波でMCAのエリア外でも対応できるため、災害時の伝達手段として十分に機能すると判断し、このシステムの導入を決めました。
- また、(一財)移動無線センターが設置している中継局などの設備は、最大限の耐震性と日頃の徹底した保守管理のもとに運用がなされており、これまで阪神淡路大震災や新潟中越地震など大災害時にも安定した運用がなされた実績があることから、災害時の信頼性も高いと言われていることも導入の決め手になりました。
九州北部豪雨災害において、MCA無線はどのように活用されましたか?
- 「みやまコミュニティ無線」が平成24年6月1日に正式運用を開始して、まだ間もない7月14日、九州北部豪雨災害に見舞われました。一級河川矢部川の船小屋水位観測所では、観測史上最高の水位を観測し、支川の沖端川とともに氾濫のおそれが非常に高
くなったため、午前7時42分に市内全域に避難勧告を発令しました。この時の避難勧告が「みやまコミュニティ無線」を使用した防災情報伝達の第1号となりました。
- この情報は市内56カ所の屋外拡声スピーカーと、行政区長や民生児童委員、消防団などに配布している700台ほどの防災ラジオにより一斉伝達され、その効果は十分発揮されたと思っています。
- また、被災地区の行政区長は、地区住民に向けた復旧作業の連絡などに、本システムのコミュニティ放送(拡声子局のマイクで音声放送する機能)を大いに活用されました。
防災体制をさらに改善する計画等が、ありましたらお聞かせください。
- 災害の際、一部の市民から「拡声スピーカーからの放送が聞こえにくい」などの意見があったため、屋外拡声子局や防災ラジオの増設を実施し、災害時の情報伝達の強化を図ります。
- 避難情報が伝わっていても、うちの家は大丈夫だろうと思い避難しない方が多いのも事実ですし、ひとりでは避難できない災害時要援護者の避難支援も重要な課題です。
このため、人的被害を最小限にくい止めるには、自主防災組織の育成を通じた地域防災力の向上が、今後最も重要な取り組みになってくると思います。
- 今後も、「みやまコミュニティ無線」を中心に、安全で安心なまちづくりを目指していきたいと思います。
※掲載内容は取材当時のものです(平成26年2月 取材)