ユーザープロフィール
大阪ガス株式会社様は、都市ガスの安定供給と保安の確保にあたり、業務用無線を使用するのに加えて、チャンネル不足や緊急時などのため車載及び携帯型のMCA無線を併せて活用しておられます。
大阪ガス株式会社様は、仙台市、塩釜市、石巻市、気仙沼市における約33万戸の復旧応援に参加されました。
東日本大震災 ガス復旧体制と大阪ガスの活動
◆都市ガスの震災復旧のため、一般社団法人日本ガス協会のもとに対策本部と現地救援対策本部が設置され、仙台、三陸、福島の三地域に分割した応援隊が編成された。
◆全国59事業者の応援を含め、ピーク時は約4,600名(うち被災地域の16事業者は約500名)が参加して、約40.2万戸に及ぶ設備の復旧活動を展開した。
◆大阪ガス様は3月14日に隊長以下5名が現地入りし、24日から業務を開始。延べ応援人数約1,300名が参加し、仙台市は4月16日、他も5月3日には終了。
[インタビュー]
現地で応援隊に参加された大阪ガス株式会社の
導管事業部中央保安指令部システム・通信技術チームの坂田典生副課長さんにお話を伺いました。
MCA無線の活用状況はいかがでしたか
「仙台市内では、複数のブロックに分けて復旧活動が展開されました。全国のガス事業者が持ち込んだ約700台の移動無線機(ガス復旧応援用の業務用移動無線(以下、復旧応援用移動無線)とデジタルMCA無線(注))が各ブロック内での連絡用として活用されました。」
(注)大阪ガス(45台)、東邦ガス(86台)
「大阪ガスのMCA無線は10グループで使用できるように設定し現地に持込みました。」
「各ブロックのガス復旧作業では、修繕隊が移動無線で連絡を取りながら同時並行して進めて行くため、修繕隊同士が混信しないよう無線周波数を割当てる必要があります。」
「復旧応援用移動無線の周波数には限りがあるので、複数の修繕隊各々に専用の無線周波数を割当てることができない場合には、混信を避けながら複数の地域で同一周波数を繰返し使う必要があります。特に近隣の地域間では混信が起き易く、毎日、作業場所が変わる度に各隊への周波数割当てを統制・差配する作業が必要になりますが、この通信統制の作業を、私を含めた数名の通信統括者が担当しました。」
「復旧作業はまず都市周辺部から開始し、徐々に中心街へ向かって進んで行きました。周辺部では無線周波数の繰返し使用が可能だったため、最初は復旧応援用移動無線のみで作業を行いま
した。その後、作業が中心部に進捗するに従って必要な無線周波数の組数が最大約30組になったため、復旧応援用移動無線だけでは割当てが困難となりました。」
「このような復旧応援用移動無線の周波数割当てが難しい場面で、MCA無線が大いに活躍しました。MCA無線は各グループ間で混信の心配が無く、近接した場所でも容易に使用できましたので、多数の班が同時に作業する場面で不可欠なものでした。」「また、MCA無線のように通常使用している無線機が、設定追加のみで直ちに仙台で使えた事はとても有効でした。」
「業務用無線と比べるとMCA無線は話すタイミングなどで慣れが必要ですが、大阪ガスでは通常業務でもMCA無線を使っているので問題はありませんでした。
このような緊急時にスムーズに運用・操作するためには、普段の業務でも使用し慣れておくことが重要だと思います。」
今回の経験を踏まえて、何か課題はありましたか
「応援にあたっては、通常業務で使用しているMCA無線機を一定期間持出すことになりましたが、本来業務での活用もあるため持出せる台数には限界があります。このような場合の対応として、復旧応援時の台数を補完するMCA無線機を備蓄しておく仕組みがあり、様々な事業者がいざと言う時に使えるような環境があればとても有効だと思います。」
(MCA無線機の準備・調整 風景)
(財)移動無線センター(取材 平成23年8月9日)掲載内容は取材当時のものです。